地域ねこと地域ねこ活動に対し一般の方が抱きがちな誤解と、それに対する見解・意見をまとめてみました。

※すべて当サイトによる意見・見解であり、地域ねこ活動にたずさわる方を代表してのものではないことをご承知おきください。

1. 地域ねこ活動をしている人って、動物愛護家でしょ?

地域ねこボランティア=動物愛護家というわけではありません。

地域ねこ活動にたずさわっているのは、ねこを少しでも良い環境で生活させてやりたい、自分の住んでいる地域の環境を良くしたいという気持ちから活動を始めた、ごくふつうの人たちです。地域ねこ活動をおこなう団体はありますが、皆が皆、組織に属しているわけではありません。多くは一個人の立場で活動しています。

2. 地域ねこ活動って、ねこ好きの道楽でしょ?

確かに、地域ねこボランティアをしている人の中には、ねこ好きな人がたくさんいます。

でも実際には、特にねこが好きというわけではないけれど、生きものが外でお腹を空かせているのがかわいそうだから何とかしてあげたいとエサをあげている人も多いのです。

それどころか、「ねこが嫌いだから、あえて地域猫活動をしている」という人さえいます。なぜでしょうか?

地域ねこ活動の主眼は、飼い主のいないねこに不妊去勢手術をし、再び放すというTNRです。手術によりねこたちは繁殖できなくなるため、自然と数が減っていきます。

ねこが嫌いだから身の回りの野良ねこをなくしたい。そんな気持ちで地域ねこ活動をがんばっている人もいるのです。

3. ねこのことが本当に心配なら、家に連れて帰って飼うはずでしょ?

外で暮らすねこは、交通事故や人間による虐待、寒さ、飢えなどさまざまな苦痛に直面します。

「エサやりの人たちはなぜ自分の家で保護してあげないんだろう」。ねこ好きな人ほどそう思うでしょう。

飼い主のいないねこへの対応については、ボランティアでエサやりをしている人たちの間でもいろいろな意見があります。

地域ねこ活動ではなく、飼い主のいないねこを保護し自宅で面倒をみながら新しい飼い主を探すという活動をしている個人・団体もあります。

一方、赤ちゃんねこや高齢ねこ、ケガや病気のねこなどを除き、地域ねこ活動では基本的に、飼い主のいないねこを家に連れて帰るということはしません。

地域ねこ活動をしている人も、すべてのねこを連れて帰りたいのは山々なのです。でも、飼い主のいないねこたちはあまりにもたくさんいます。見つけるたびに家にいれていたら、あっという間に10頭、20頭と増えていってしまいます。

たくさんのねこたちの面倒をきちんとみるには、時間もお金もかかります。そうすると、今度はボランティアさんの暮らしに影響が出てきてしまいます。

野良のねこをかわいそうに思って次々と保護するうちに、本人の生活が立ち行かなくなるというケースも実際に起きています。たくさんのねこ(いぬ)を飼いきれなくなり生活が破綻してしまう、いわゆる「多頭飼育崩壊」です。

こうなることがわかっているから、地域ねこボランティアたちはあえて、安易にねこを家にいれられないのです。

ねこは外で暮らせばいいなんて思っている人はひとりもいません。ねこたちを守り、同時にボランティアの負担もできるだけ抑えるために最も優れた手段が地域ねこ活動です。

地域ねこ活動はあくまで、ねこたちの命を守るための苦肉の策なのです。

4. 地域ねこ活動って結局は娯楽でしょ?

ボランティアたちの役割は、不妊去勢手術(TNR)から毎日のエサやり、トイレの設置・掃除、近隣への説明などをおこない、猫の一代限りの生をまっとうさせるためのが環境を整えてあげることです。決して楽しいだけの作業ではありません。

それでも続けているのは、厳しい環境で生きるねこたちが少しでも楽になれるよう助けてあげたい、自分たちの街を住みよくしたいという思いがあるからです。

5. エサやりなんて野良ねこを増やすだけでしょ?

エサやりと野良ねこの繁殖は分けて考える必要があります。

エサやりをするから野良ねこが増えるわけではありません。避妊・去勢手術をしていないから増えてしまうのです。地域ねこ活動の最も大切な部分は、野良ねこを一時保護し、動物病院で避妊・去勢手術をしたあと再び放すというTNRです。

避妊・去勢手術をすれば、エサで栄養状態が良くなったとしても繁殖することはありません。

6. 地域ねこって要は、外飼いのねこでしょ?

地域ねこボランティアたちは、ごはんやトイレの世話をしているだけで、“飼って”いるわけではありません。特定の飼い主を持たず、その地域に住みついているねこ=地域ねこです。

7. エサやりって法律で禁じられてるんでしょ?

和歌山県や京都市、東京都の荒川区には、野良ねこへのエサやりについての条例(県や区など、地方公共団体が独自に定めたルール)があります。

しかしこれらはエサやりを一律に禁じているわけではなく、「マナーを守ってエサやりや地域ねこ活動をしましょう」という内容です。

問題とすべきはエサやり自体ではなく、置き餌をしたり後片付けをしなかったりなどで周辺の環境を悪くしてしまうことです。

そうしたマナー違反のエサやりは近隣住民とのトラブルの元になります。野良ねこにエサをやる人はきちんとマナーを守り、周辺環境に配慮したやり方をする必要があります。


8. 野良ねこは保健所へ連れていかないといけないんでしょ?

2012年に動物の愛護及び管理に関する法律が改正されたとき、「野良ねこの捕獲・(保健所への)持ち込みは動物愛護の観点から原則として認められない」こと、「地域ねこ活動を推進すること」という国会の付帯決議が明記されました。

そして2015年6月には、環境省から各自治体に対し、捕獲された野良ねこが持ち込まれてきた際はこの付帯決議を踏まえて取り扱うようにという通知が出されています。

つまり、飼い主のいないねこをわざわざ捕まえて保健所へ連れていくべきではないし、連れて行ったとしても上記のことを根拠に引き取りを断られるでしょう。

9. 地域の住民全員が賛成でなければ、地域ねことは言えないでしょ?

地域ねこ活動はそもそも、TNRによって野良ねこの繁殖を防ぎ、ルールを守ったエサやりをすることによって、周辺環境を良くしていこうという取り組みです。ねこが嫌いな人に対し「ねこを好きになってよ」と押しつけるものではありません。

地域にはさまざまな人が住んでいます。ねこが好きな人がいる一方で、ねこが嫌いな人もいます。ねこ自体は好きだけど、ねこのフンや鳴き声、ルール違反のエサやりには困っている人もいるかもしれません。

地域ねこ活動に限らず、地域で何かをしようとする場合に住民全員が賛成してくれることは現実にはありえません。たとえば、待機児童の問題が深刻で保育園が切実に求められていたとしても、設置に反対する人は必ずいますよね。

住民全員の賛成が得られればベストです。でも現実には、住民全員を説得している間にも野良ねこは次々と生まれてきてしまいます。地域ねこ活動を進め、効果をあげることができれば、最初は反対していた人でも認めてくれるようになるでしょう。

そのためにも地域ねこボランティアは、「野良ねこの数が減りました」「役所に寄せられる苦情の数が減りました」など活動の成果を積極的に発信し、地域の理解を求めていくことが大切です。

10. 地域ねこ活動をしていると、よけいにねこが増えるんでしょ?

地域ねこ活動はTNRによって繁殖を防ぐため、理論上は今いるねこたちの代で終わりになります。TNRをしているのにねこが減らない場合には、次の2つの理由が考えられます。

「ここなら面倒をみてもらえる」と考え、ねこを捨てに来る人がいる

まず、ねこやいぬなどの遺棄は100万円以下の罰金が科せられる犯罪です(動物の愛護及び管理に関する法律第44条)。しかし、軽い気持ちで動物を捨てる無責任な人は後を絶ちません。遺棄は犯罪だという認識をもっと広めていかなければなりません。


エサを目当てに、付近の野良ねこが集まってくる

エサやりをしていると、ごはんにありつこうと周辺に住む野良ねこが1か所に集まってくる場合があります。その中に避妊・去勢手術をしていないねこがいると、繁殖し数が増えてしまうケースも考えられます。

これを防ぐ最も効果的な手段はTNRを徹底することです。避妊・去勢手術をされているねこは耳に切り込みが入っています。切り込みのないねこを見かけたら、なるべく早く一時保護し手術を受けさせることで繁殖を防げます。